長引く「じんましん」でお悩みのあなたへ
1. 「慢性じんましん」とはどんな病気ですか?
「慢性じんましん(慢性特発性蕁麻疹)」とは、はっきりした原因がないのに、蚊に刺されたような赤いふくらみ(膨疹)が、出たり消えたりする状態が6週間以上続く病気です。
多くの患者さんが強いかゆみに悩まされ、時にはまぶたや唇が腫れる「血管性浮腫」を伴うこともあります。
まず知っておいてほしい大切なこと
• 人にうつる病気ではありません。
• 命に関わるような重いアレルギー反応とは異なります。
• ほとんどの場合、内臓の病気が隠れているわけではありません。
• 多くの人で、いずれ症状はなくなります。(約半数の方が1年以内に治まります)
2. 症状を悪化させやすい要因はありますか?
慢性じんましんは特定の原因がないことが多いですが、症状を悪化させたり、誘発したりする要因がいくつか知られています。ご自身の生活を振り返ってみましょう。
• 物理的な刺激
o 衣類の締め付け、バッグのストラップなどによる圧迫
o 熱いシャワーやお風呂、急激な温度変化
• お薬
o 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる痛み止めや熱冷まし(アスピリン、イブプロフェンなど)は、症状を悪化させることがあります。市販薬を飲む前にはご相談ください。
• 食べ物
o 特定の食物アレルギーが原因であることは稀です。しかし、一部の食品添加物や、食品に含まれる天然の化学物質が症状を悪化させる可能性を指摘する専門家もいます。
• その他
o ストレスや疲労
o 風邪などの感染症
3. どのような治療をしますか?
治療の目標
慢性じんましんの治療目標は、「症状をゼロ、あるいは日常生活に支障がないレベルにコントロールすること」です。症状を完全に「治す」というより、症状が出ないように「抑える」治療を続けながら、病気が自然に治まるのを待ちます。
治療の進め方
• ステップ1:抗ヒスタミン薬の内服 治療の基本は、かゆみの原因物質である「ヒスタミン」の働きをブロックする抗ヒスタミン薬です。眠気の少ない第二世代の薬が中心となります。
【重要】 症状がある時だけ飲むのではなく、医師の指示通りに毎日きちんと飲み続けることが、症状を安定させる上で非常に重要です。
• ステップ2:薬の増量・変更・追加 ステップ1で症状が十分にコントロールできない場合、医師は抗ヒスタミン薬の量を増やしたり、別の種類の薬を追加したりすることを検討します。
• ステップ3以降:専門的な治療 これらの治療でも症状がコントロールできない難治性の場合は、注射薬(生物学的製剤)やその他の免疫を調整する薬などが選択肢となります。これらの治療は、皮膚科やアレルギー科の専門医のもとで行われます。
• 緊急時の治療 症状が急に悪化し、日常生活に大きな支障が出る場合は、短期間だけステロイドの内服薬を使うこともあります。
4. よくあるご質問
Q. 薬はいつまで飲み続けますか?
A. まずは症状が完全にコントロールされた状態を数ヶ月間維持することを目指します。症状が安定していれば、医師の判断で少しずつ薬を減らしていきます。自己判断で急に薬をやめると、症状がぶり返すことがあるので注意しましょう。
Q. この病気は治りますか? A. 慢性じんましんは、数年以内に自然に治ることが多い病気です。ただし、症状が5年以上続く方もいます。治療の目的は、症状がない快適な状態を維持しながら、病気が自然に落ち着くのを待つことです。
最後に
症状が思うように良くならず、不安になることもあるかもしれません。しかし、多くの患者さんで症状はコントロール可能です。
焦らず、根気よく治療を続けましょう。